Kirsikka*  ここは「水城りん」が自分の好きな作品への愛をダダ漏らせている個人サイトです。
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「あんまり心配かけんなよ、と」
 私を見るなり、物も言わずに抱きしめてきて、私が慌てふためくと、先輩はそう言った。
いつも余裕が服を着て歩いているように振る舞う、そんなこの人でも、誰かを心配して眠れない夜を過ごすことがあるんだろうか。
 ふと、そんなことを思った。
「イリーナ」
「はい」
「――イリーナ」
「……先輩?」
 先輩の腕は、まるで私がちゃんと、ここに存在しているかを確かめようとするかのようで。
迷子だった幼子が、母親を見つけだした時のように、微かに震えていた。
 震えているような気が、した。
「すみません、心配、かけて……」
――もう大丈夫です。
――私は生きてます。
――ちゃんとここにいます。
――もうどこへも行きませんから。
 言いかけた言葉は、何一つ唇から漏れることはなく。
 ただ、今自分を抱きしめているこの男にとって、自分が必要なのだということを。
 ただそれだけを、強く感じた。



「あっちーい!!」
「……自分の耳つかめよ、と」
給湯室にて。



ここにあるぬくもりを、この手で守れたら。



かまって欲しそうにしてたからだぞ、と。



「おーろーしーてー!!」
「いいからじっとしてろよ、と」

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