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Harry Potter > ラベンダー・ブラウンの日記

 私の名前はラベンダー・ブラウン。
 グリフィンドール生の中でも、例の有名な3人組とは比較的仲が良い方かな。
 まあ、どこにでもいる普通の魔女候補の女の子。
 あの3人組、ハリーとロンとハーマイオニーの3人とは、別に特別仲がいいっていうわけじゃないの。
 時々談話室で一緒におしゃべりしたり宿題したり、お菓子を分け合ってふざけたり、まあそういう友達。
 中でもハーマイオニーは、女の子同士っていうこともあって、3人の中じゃ結構仲のいい方だわ。
 もっとも、あの子は恋愛話とか色恋沙汰とか得意じゃないみたいだから、私やパーバティがしゃべってるのを、本を読みながら聞いているって感じなんだけどね。
 可愛くないわけじゃないのよ。むしろ逆。髪もきちんと結い上げればとっても可愛いと思うし、肌だって私たちほどスキンケアやお化粧をしないっていうのに、剥き卵みたいにすべすべなんだから。大きなチョコレート色の瞳だって、強くてまっすぐでとっても魅力的だわ。黙っていれば可愛いのよ、とっても。
 だから、ハリーやロンだってハーマイオニーに対する態度と私たちに対する態度は違うのよね。
 そりゃあの子達は親友だし、他の誰よりも仲がいいんだろうけど、どうもそれだけじゃないような感じ。

 まあ特にロンね。
 実を言うと私、入学した当初くらいはハリーに気があったのよね。だってほら、彼って「英雄」って呼ばれてるじゃない?顔も結構かわいいし。一度はみんな憧れるもんよ。特にクィディッチの時なんて、普段のぽやーっとしたところがなくなって素敵だわ。
 でもハリーは競争率が高そうだったし、有名人の彼女になんてなったら大変そうだって思ったのよ。四六時中注目されちゃうわけだから、何もかもをサボれないじゃない?
 私、つき合ってしんどいのって嫌なのよね。だから早々に諦めたわけ。

 で、ついで彼の親友であるロンに目が向いたんだけど。
 私って結構観察眼あるほうだと思う。だって他の子よりも早く、その事実に気付いたんだもの。
 要するに、ロンはハーマイオニーが好きなのね。
 授業中もちらちら気にしてるみたいだし、何かにかこつけてまとわりついてる感じ。常に気にかけているって言うか。
 ロンにはジニーって妹がいるから、最初は同じ感じなのかなって思ったけど、あれは違うわ。兄の顔じゃなく、何だか無条件に甘えてるみたいな。ハーマイオニーの厳しい優しさってお母さんみたいなんだもの。
 だから私、ロンもいち早く諦めた。好きな子がいるとなったら興味がそがれちゃったのよね。
 青春は短いし男の子なんて掃いて捨てるくらいいるのよ。そりゃグリフィンドールの男の子は大抵ハーマイオニーに一目置いてるんだけど、男の子はグリフィンドール生だけじゃないんだし、それ以外の男の子も世界にはたくさんいるんだって分かってるんだから。

 そんなわけで今現在彼氏募集中の私なんだけど、それからもずっとあの3人の色恋沙汰に関しては神経張ってた。だって、面白いんだもの、見てて。
 それで一番に目に付いたのはネビルだったわ。
 ネビルは苛々するくらい鈍くさいんだけど、薬草学に関しては右に出る者はいないわね。ハーブや薬草や、いろんな植物を育てるのがとっても上手なの。
 でもほら、普段が人より数倍鈍くさいから、それをいつもハーマイオニーが助けていたのよね。だからネビルが彼女に好意を持つのは当然じゃない。
 ハーマイオニーって、知らず知らずのうちに男前さを発揮するタイプというか、意識してない凛としたところが男の子のツボにくるみたい。普段絶対見せない涙とか見た子は、イチコロって感じ?
 でもネビルは、憧れっていう感じが強い気がしたわ。憧れと言うか、尊敬から入った恋っていう感じね。

 チョウとハリーのことは、ここに書かなくたってみんなが知ってることだからあえて書かないことにするわ。書くだけ無駄なのよ。インクと羊皮紙の無駄だわ。私の腕の筋肉もね。
 それに、ハリーを見てるより、ハーマイオニーに視線を向けてる男の子達の壮絶な戦いを見てる方がよっぽど楽しいわよ。
 ハーマイオニーったら、全然気付かないのよね。鈍感なのよ、ホントに。救いようがないくらい。ホント、男の子達には気の毒だけど。

 去年の三校対抗試合のクリスマスダンスパーティの時は本当に面白かったわあ。
 ハーマイオニーをめぐる熾烈な争いが水面下で起こってるなって、一目見て分かった。そう、私がここにつらつらと書き記しておこうと思ったのも、あの日以来男の子達の、それも数人の男の子達の態度が見るからに変わったからなのよね。
 まずロンでしょ、いわずもがな。あの時の悔しそうな嫉妬に狂った彼の顔は忘れられないわ。鬼気迫るって感じだった。
 それからダームストロングのクラム。彼は上手くハーマイオニーをゲットしたと思うわ。あの子には変化球より直球なのよ。どうやらクラムとは、未だに文通を続けてるみたいね。時々手紙を持ってフクロウ小屋へ走っていくハーマイオニーを見かけるもの。あら、それともクラムとは別の人なのかしら?
 それと、これは私の直感が教えたんだけれど、スリザリンのドラコ・マルフォイ。
 驚くなかれよ。あの冷徹お坊ちゃまは、ハーマイオニーに気があるのよ。女のカンがそう教えてるわ。
 そう思えば、色々なことが符合してくるのよね。
 例えば、やたらめったらあの3人に絡むのだって、ハーマイオニーの気を引きたいのと、あの子の側にべったりくっついてるハリーとロンが疎ましいんだって納得できるわ。バカの一つ覚えみたいに「あの言葉」でハーマイオニーを侮辱するのも、単に自分を見て欲しいからなのね。
 要するに、彼って子供なのよ。

 今日だって、授業の後ハーマイオニーがいつものように図書館へ行くのを、後からこっそり付いていったのだって知ってる。ハリーとロンがいないかキョロキョロ確かめて、周りに知り合いがいないか不安そうにしてたから、私にはすぐ分かった。軽くストーカーみたいになってきてるわね。危ないわ。
 思いっきり挙動不審なのよ。何でもないフリしながら、少し離れた書棚からコッソリ様子をうかがってるみたいだったけど、明らかに不審者よ。
 どうして私がそんなことまで知ってるのか? そりゃ、面白そうだからハーマイオニーに気付かれないように、それとなく情報を収集してるからに決まってるじゃない。
 実は結構、口には出さないけどマルフォイのことに気付いてる女の子はいるのよ。色々見て見ぬ振りをしてるわけだけど。だってばれたときの仕返しが怖いじゃない。
 グリフィンドールの談話室にいると、女の子同士そういう話題になるのよね。一番情報に明るいのはもちろんパーバティと私。パーバティって恋話にすっごく通じてて、裏じゃ井戸端会議の女王……もとい、情報通って言われてるのよ。
 あの子の側にいれば、否が応でも面白い情報が聞けるのよね。それが最近の日課になりつつあるわ。だって、いろんな恋の顛末が気になるんだもの。

 でも、さっきも書いたけど、青春は短いのよ。
 確かにマルフォイがハーマイオニーを好きだなんて、誰が聞いたって耳を疑うし思わずマダム・ポンフリーの所へ一目散に走っていきたくなっちゃうだろうけど。
 確かにマルフォイは純血でハーマイオニーはマグルで、いわゆる「許されない恋」かもしれないけど。
 好きなら好きでいいじゃない、って私は思う。
 本気で好きなら、障害になる物全部蹴散らしてでも、想いを伝えればいいじゃない。
 ああいう風に大義名分を盾にしてウジウジしてるのって大嫌いよ。決めるならスパッと決めてよね。だって時間がもったいないじゃない。
 幸運にも、マルフォイって顔だけはいいじゃない。さっさとしないと、ロンやクラムに先を越されるわよ。あ、クラムには越されたのか。でもクラムはオトモダチって感じだし。うーん、でも分かんないわよこの先どうなるかなんて。
 もしかしたらハリーとくっついちゃう可能性だってなきにしもあらずなんだから。去年だって、ハリーとハーマイオニーはいつも二人でいて、新聞にまで写真付きで載っちゃったんだものね。ロンが嫉妬に狂ったってしょうがないわ。
 そういえばあの時も、マルフォイったらもの凄い顔で二人を睨んでたっけ。ああ、あれは今考えたらロンと同じで嫉妬に狂ってたのね。
 それで今日、図書館に本を借りに行ったとき、奥のいつもの席で黙々と勉強してるハーマイオニーを見かけたの。
 まさかと思って周りを見てみると、いたわ。
 いたのよ。懲りずに。
 ハーマイオニーからは死角になってるけど、向こうからはよく見える、絶好の場所をしっかり確保して、マルフォイが本を片手に座ってた。
 彼は私と目が合うと、ぎょっとしたような顔をしたっけ。
「何してるの?」
 思わず近寄って、小声でそう聞いちゃった。答えは分かってるんだけどね。
「気安く話しかけるな」
 いかにも嫌そうに、彼はそう言ったわ。邪魔するな、って顔だった。ああ、私の体でハーマイオニーが見えなくなってたのね。
 あらそう、そういう態度を取るわけ。ちょっとからかってやりたくなって、いつもなら絶対そんなことしないのに、大胆にも言っちゃったの。
「ハーマイオニーに何か用なの?」
 あからさまにぎょっとした顔をしたわ。
「な、なん……、何で僕があんな『穢れた血』なんかに用があるもんか!」
 小声だったんだけど、動揺が出まくりだったわね。
「ふうん」
 周りに彼の取り巻きがいなかったもんだから、ついに私は言ってやった。
「もしかして、ハーマイオニーのこと好きなわけ?」
 あの後の彼の顔ったらすごかったわ。赤くなったり青くなったり、あ、人間の顔ってこんなに変化するんだーって思わず冷静に見入っちゃったくらい。
「な……、何で僕が!!このマルフォイ家の嫡子である僕が!!」
「……あっそう。それもそうね」
 簡単に引き下がったのに拍子抜けしたみたいに、マルフォイはしばらく口をぱくぱくさせて、何か言う言葉を探してるみたいだった。まるで金魚だわよ、真っ赤な顔してさ。今思い出しても吹き出しそう。
 きびすを返して帰ろうと思ったら、あいつに呼び止められた。
 何だろうと思って振り返ると、あいつってばばつの悪そうな顔してさ、
「グレンジャーに何か言うのか」
「は?」
「…………」
「…………」
「…………」
「言わないわよ何にも。安心したら?」
 あいつは何とも不服そうな顔をしたみたいだったけど、それ以上何にも言わなかった。あれ、もしかして何か期待してたのかしら。やだちょっと、もしそうだったらどうしよう。私、何にも言ってないわよ。
 まあ、そういうことは自分の口から言うのが一番でしょうよ。人伝えに言われるより、本人に言われた方が信憑性あると言うか、気持ちがこもってるわ。
 何度も言うけど、青春は短いのよ。
 ウジウジ嫉妬したりコッソリ見つめてるくらいなら、スパッと告白するなり何なりすればいいのよ。
 だから、今度マルフォイが一人でいるのを見かけたら言ってやろうと思ってるの。
 悪いけど、バレバレよ、って。
 きっと猛烈な勢いで言い返してくるんだろうなあ。素直じゃない奴。言ってくれれば情報くらい提供してあげるのに。
 明日ホグズミートへ行くのに、ハーマイオニーに本を選ぶの手伝って欲しいって言ってあるから、その時にでもそれとなく話を振ってみるかー。
 まあ、期待はできないだろうけど。
 あのマルフォイに恩を売るっていうのも面白そうじゃない、うん。
 それにしてもスリザリン一の狡猾な奴相手に。私って結構たくましい子だったのねえ。
 いやだって、何だかマルフォイとハーマイオニーがくっついたら、「ロミオとジュリエット」みたいで素敵じゃない。エンディングは置いといて。
 マルフォイも安心すればいいわよ、私って噂は好きだけど、していい噂とそうでない噂の区別くらいつくんだから。あいつの気持ちなんてのはもちろん後者でしょうから、間違っても談話室で広めたりなんかしないわ。
 しばらくは私だけのお楽しみに取っておくのよ。

 さあて、そろそろ日記も終わりにして明日に備えるとしましょうか。
 そうだ、パーバティに貸してるヘアトリートメント、そろそろなくなるから明日追加を買わないと。


意外と女子にはバレバレになっちゃってそうなドラコとかどうでしょう。
知らないうちにコッソリ応援されちゃってたりすると可愛い。

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